CBDオイル

https://note.com/nakamuraclinic/n/n39a92524da4b

CBDオイルが著効した症例を経験したので、ここに供覧する。ブログに書くことの承諾は得ているが、特定を避けるために詳細は変えてある。

60代男性
【主訴】性格豹変(突然人が変わったようにキレる)、認知症疑い
【現病歴】
(本人はほとんど話さず、同行してきた妻が語る)
「十年ほど前から彼と一緒に暮らしています。基本、温厚でまじめな人。血のつながりのない私の息子を、自分の子供のように育ててくれた。でもここ数か月、人格が急変するというのか、ささいなことで急激にキレます。それで子供が、彼と一緒に過ごすのが怖いと言いだして。職場でもケンカっぱやくなって、つい先日も後輩に頭突きを食らわせました。でも罪の意識がまったくありません。やっていいこと悪いことの区別がついていないようです。
前はこんな人ではありませんでした。人格が完全に変わってしまったようなんです。職場のみんなも「なんだか○○さん、変わってしまったな」って言ってます。
常に粗暴かというとそんなことはありません。普段は仏様のようにやさしい人です。それが本来の彼なんです。でも、急にコロッと変わって、冷たい鬼になる。職場のみんなが彼を怖がっています。
あと心配なのが、言葉の理解力が落ちたのか、会話が通じないところがあります。そのせいもあって、以前よりも黙っていることが多くなりました。記憶力も悪くなっています。ご飯を食べた後なのに「まだ食べてない」とか言います。認知症ではないでしょうか」

さて、どうしたものか。
上記の経過を神経内科(あるいは精神科)の先生が読めば、ピック病を疑うと思う。これは認知症の一種(前頭側頭型認知症)で、人格変化、行動異常、言語障害を特徴とする。記憶力の低下は初期には見られないことが多いが、症状の進行につれて次第に出現する。
簡単な認知症検査(長谷川)をしてみたところ、26点といわゆる認知症は否定的だったが、ピックを否定する根拠にはならない。
仮にピックだとしても、根本的な治療法はない。アリセプトなど抗認知症薬の投与はむしろ症状を悪化させる。せいぜい抑肝散を使ってお茶を濁すぐらいしか方法がないのが現状である。

思うところがあって、CBDオイルの服用を勧めた。臨床CBDオイル研究会の勉強会で、躁病患者の怒りの激発に対してCBDオイルが効く例を見たことがあったから。
1週間後。来院した奥さんが語る。
「すいません。CBDオイルがもう切れてしまったので、次回予約より先に来ました。
すごいです、CBDオイル。本当に効いています。一滴でも舌にのせてなめていると、感情がすっと落ち着くようです。効果は、彼の目を見ればわかります。「何か怒鳴ってやろう」というような攻撃的な目つきが、CBDオイルを飲めば、3分後には消えています。あまりにも劇的に効くので、本人も感動していますが、何より私たち家族が感動しています。また子供に優しく接することができるもとの彼に戻りました。理解力も回復したようで、言葉が通じなくて困ることもなくなりました。
前回の診察のときにお伝えしていませんでしたが、こちらの病院に来る前に、近くの市民病院でいろいろな検査を受けていました。脳波で小さなてんかんが確認され、知能検査ではIQ 81でした。発達障害の診断で、てんかんの薬が処方されました。でも副作用が強くて飲めなくて、別の薬に変えてもやはり合わなくて。そういう経過があって、こちらに来たんです。薬をあまり使わないということなので。
薬なしで治って、本当によかったです。理解力や判断力もしっかりしているので、今のIQはもっと高いと思います。

この人の回復ぶりを間近に見て、私もCBDオイル、試してみたんですね。実は私、二十年ほど前にパニック障害と診断されたことがあります。リーゼ(抗不安薬)を処方されていて、飲めば確かに症状がよくなります。でも薬の副作用が怖くて、途中でやめました。離脱症状が大変だったけど、何とかやめれたんですが、その後も閉所恐怖とか、何かと症状が残っていて苦労しています。青森と函館を結ぶ青函トンネルを走る電車内でパニックを起こしてしまったこともあって、長距離の電車は今でも無理。姫路に行くにも新快速は怖いので快速でないとダメとか。新幹線も無理です。トンネルが怖いんです。だから飛行機のほうがマシです。
でもCBDオイルのおかげで、私、新幹線に乗れたんです!博多まで行って帰って来れました。誰にでもできることに思われるでしょうけど、私にとっては奇跡なんです!
CBDオイルは、薬よりも薬だと感じます。つまり、リーゼよりも効いてるんですね。リーゼ飲んでいても新快速には乗れなかったので。おまけにCBDオイルには副作用もないんだから、本当にすばらしいです。なぜこんなすばらしい治療法が知られていないんでしょうか。
私、とあるNPO法人の理事をしていて、精神科の薬を飲む子供と接する機会が多いのですが、ぜひCBDオイルを広めたいと思っています。薬の代わりにCBDオイルを飲むことで救われる子供が、きっとたくさんいます」

病状の回復を本人はじめ奥さんや子供さんが喜んでいて、何よりである。
めでたしめでたしで、話としてはここまででいいのだが、一応僕も医者である。CBDオイルがこの人に効くという確証があって使ったわけではない。なぜ効いたのか、そもそもこの人の根本的な病態は何だったのか。そのあたりは把握しておきたいところだが。。
・てんかん波が確認されたことから、何らかのてんかん(たとえば欠神発作とか)が背景にあったのかもしれない。CBDオイルがてんかんに著効することには十分なエビデンスがある。
・あるいは、ピック病だったのか。そうだったとして、ピック病にCBDオイルが効くエビデンスはあるのだろうか。論文を検索したが、該当文献を見つけることはできなかった。
ただ、一般の認知症への有効性は示唆されている。
『認知症治療のための医療用大麻~臨床的有効性のレビュー』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK546328/
「前頭側頭型認知症は脳の前頭葉と側頭葉における神経細胞が進行性に失われていく一連の疾患群を指す。病態の進行により、抑うつや精神病様症状を生じる。CBDオイルは抗精神病薬とは異なり、その服用により死亡リスクを上昇させることはない。CBDオイルはその抗炎症作用により、不安、錐体外路症状(振戦、固縮、動作緩徐など)を軽減し、概日リズム(睡眠周期)を整える働きがある」
この程度の記述しか見当たらなかった。前頭葉、側頭葉で次第に脳細胞が失われていく流れを、CBDオイルがブロックしてくれたのかもしれない。